2008年11月29日

おじぃの三線。

ケアマネージャーは、担当のお客さまのご自宅を月に一回訪問することになっています。

 訪問して、ご本人やご家族からお話を伺いながら、体調や生活環境に変化がないかどうか確認させてもらったり、ヘルパーさんやデイサービスなど、利用しているサービスについてご意見ご感想なども聞かせてもらったりします。

最近私が担当させていただいているSさん。

90歳をすでに超え、今はご夫婦で仲良くゆったりとした日々を過ごしていらっしゃいます。

 Sさんはいろんな仕事をしながら、たくさんの子供たちを育ててこられました。どんな仕事も手を抜かず真面目に働き、その分野で様々な表彰を受けるなど実績を残しました。車の免許は60歳を越えてからチャレンジして取得したそうで、何度もそのことをちょっと誇らしげにお話するSさん。80歳くらいまでは奥さんとやんばるまで度々ドライブに行っていたそうで、よっぽど嬉しかったのでしょう。

 そんなSさんも高齢になり、ハンドルを握ることもなくなり、家でただ日々を過ごすだけの毎日が続くようになりました。
物忘れや、趣味や生活意欲の低下がみるみる現れてきました。

 実はSさんは三線の腕前も教師免許を取ったほど。
ですが、その三線に触れることもほとんど無くなっていたのです。

 そんな時、介護保険を利用して、週1回ヘルパーさんがお家に訪ねてきてお掃除をしてくれることになりました。
 高齢のご夫婦には負担のかかる床掃除などをヘルパーさんにお願いしているのですが、このヘルパーさんが来てくれるということが、Sさんにとってとてもよい刺激になったよう。しばらく遠ざかっていた三線に、再び手を伸ばすようになったのです。

 私が月1回の訪問をすると、奥の部屋からひょいと三線をもってきて畳間に腰を下ろすSさん。
準備運動のように体をすこし揺らしながら、ちんだみをします。

そして歌三線ミニステージのはじまり。

 Sさんの爪弾く弦の音色と、90を越えているとは思えないしっかりとした、でもときどき声の擦れるSさんの歌声。
 それを超至近距離で聴かせて頂く私。
 仕事で訪問していることも忘れてしまいそうになるほど、なんとも言えない素敵な歌三線の音色にすっかり惚れてしまいました。

 戦前に生まれ、激動の戦中戦後を生き抜いた人が奏でる三線の音は、やっぱり何かが違う。
「おじぃの三線はすごいっ!!」
と、思わず心の中で叫んだ私なのでした。

 介護の仕事をしていて、やっぱり嬉しいのはSさんのように元気になっていく高齢者の姿に出会えること。

 Sさんの三線が、いつまでも、いつまでも聞けること。
 間接的ながらも、そのお手伝いができるこの介護のお仕事に出会えた私は、なんと幸せなのでしょう。

おじぃの三線。
また来月も聴かせて下さいね、Sさん!


                                      居宅介護支援事業所 ライフサポート
                                      ケアマネージャー     ノダ知加子


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Posted by ライサポ事務局 at 12:48│Comments(4)ノダ知加子
この記事へのコメント
いいですね
Posted by けいちょんけいちょん at 2008年11月30日 08:22
いいでしょう♪
Posted by ケアマネノダ at 2008年12月02日 20:49
どーかん!!!

 やっぱりこの仕事の楽しさ、やりがいの原点ですよね~

 今回、あらためて感じたのは、人のやる気、役割がどれだけ、生きる力を与

えるか!!

 このヘルパーさんも、人としてのかかわりを、とても大切にしていたのでしょ

う! とてもとても素敵な話です
Posted by まんたろう at 2008年12月10日 09:26
訪問しただけで元気を引き出せる、マジシャンのようなケアマネ目指して私も頑張りたいと思います(笑)。
Posted by ケアマネノダ at 2008年12月12日 21:19
 
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